お笑いの世界では、返しのタイミングがすべて
チーン理論には応用編があります。お笑いの世界では、返しのタイミングがすべてと言っていいほど重要です。
ボケとツッコミの基本的なスタイルでは、ツッコミのタイミングが笑いの生死を決めるほどで、この場合はほとんどの場合、かなり早いタイミングになっています。
ボケ役が言い終わらないうちに、かぶせて返して、ワンセットで笑いを生み出すという手法です。話の中身で笑わせるというのは、非常に難しいことで、たまたまその話の中身を面白いと理解し得る人にしか通じません。
名人と言われる人は、「間」の取り方が上手い
全員が面白いと思い、全員が笑うというようなことは、ほとんど無いと言ってもいいぐらいでしょう。しかし、やりとりのタイミングの面白さは広く共有できるようです。
一人で演じる落語でも講談でも、タイミングで可笑しさ、面白さを出すことができます。いわゆる「間」ですね。名人と言われるような人は、この「間」の取り方が上手い。
話の中身はみな一緒です。内容が他の人より優れているなどということは無い世界で、そこに生じる差は何でしょうか。
視聴者は、その「間」を楽しんでいる
いろいろあるでしょうが、ひとつの重要な要素は、タイミング、すなわち、「間」ですね。ところで、落語でも講談でも、視聴者は、その「間」を楽しんでいます。
「間」を楽しめるということは、「間」について鋭い感性を既に持っているということですね。
では、およそ誰でも、すぐに簡単に「間」を取るにはどうしたらよいか。これについて、極意塾では、チーン理論を提案しているというわけです。
すぐに簡単に「間」を取るには、チーン理論が有効
絶好のタイミングで鈴を鳴らすには、ここぞの瞬間を集中して待っていなければできませんが、もともと「間」の感性は持っているわけですから、およそ誰でも、すぐに簡単にできることです。
そして、やってみればとても樂しいことです。
反対に、コミュニケーションを悪くしたり、話をつまらなくしたり、相手を不愉快にさせたければ、タイミングをわざと外し続けていればオーケーです。およそ誰でも、すぐに簡単にでき、絶大な効果があります。
特に、相手が話し終わらないうちに、まったく別の話を返す「かぶせ」が効果絶大です。こういうマイナスの技が得意な人が少なくないように見受けられるのですが(笑)。
No.051
文:極意塾塾頭 野中由彦